「 (FF)揺れる尻尾 」 竹湖+マツモトツナシ [] 2007/08/25 (Sat) 01:07
★Continue 彼の相棒はいつだって、突拍子もないことを仕出かしてみせては、彼の心を浮き立たせてくれる。 この前だって、手に入れたばかりのクッションを引き裂いたかと思ったら、中綿を取り出して塒の床一面に撒き散らして「雪みたい」と大はしゃぎしてみせた。そのあと唐突に始まった「真夏の冬ごっこ」では、それはもう目眩がするほど暑い思いをしたのだが、無茶苦茶に面白かった。 だから今日も今日とて、見慣れた煉瓦の壁に塗りたくられた鮮やかな黄緑のペンキを目にしても、マンゴジェリーは別段驚きはしなかった。 「なにしてんの、お前」 「あれ、もう見つかっちゃった?」 振り向いたランペルティーザは軽く舌を見せたかと思うと悪びれた様子もなく、にしし、と満面の笑みを見せた。ひゅんと伸びた短めの尻尾の先は、楽しそうに右へ左へとくねっている。 「ね、コレなんて書いてあるかわかる?」 「わかんねぇよ。見たことねぇ形だもん」 壁に書かれていたのが人間たちが使う文字だということだけは、マンゴにもわかった。街でよく見かける幾つかの決まった形ならば、それが指す意味も知っていたが、この黄緑色のは初めて見る形だ。わかる訳がない。 首を捻るマンゴを見て、ランペルが満足そうに、ふふ、と含み笑いを漏らした。 「これ、あたしの名前なの! ランペルティーザって書いてあるの!」 ミストに教えてもらったのよ、とランペルは両手を腰に当てて、得意そうに胸を張った。 「貧しい胸張ったって、平らなのが目立つだ・・・ごふっ!」 言い終わらないうちに突き出されたランペルの拳は、過たずマンゴの鳩尾にめり込んでいた。程々のツッコミならば大人しく喰らっておこうとなどと甘く考えていた所為か、予想を遥かに超えるその速さと威力に演技でなくマンゴの息が止まる。長年の勘でとっさに受け流した部分はあるものの、一歩間違えれば確実に息の根そのものが止まっていただろう。油断ならない。 「・・・な に か、言ったかしら?」 「やー、すげぇな! 俺らの名前も人間の文字にできるんだな! ビックリした、マジすげぇ!」 「でしょでしょ! すっごい練習したんだから!」 何処のスイッチで切り替えているのか、すぐに手を打ち合わせて跳ねるように笑ってみせたランペルに、流石のマンゴも腹をさすりながら苦笑するしかない。 しかし改めて壁に目を向けて、なるほどこれが相棒の名前かと思うと、読めなくても妙に親近感が湧いてくるのが面白い。 「・・・なぁ」 「ん? なに?」 「ミストに聞けば、俺の名前の形もわかるかな」 マンゴの呟きの意味を理解して、ランペルの目がすぅっと細められた。マンゴの口元にも、にいっという笑みが浮かぶ。 たしか商店街の角の画材屋が、先週あたりからシャッターを塗り変えるのだと店先にいろんな色のペンキを用意していた。この黄緑色も、恐らく元はあそこのものだろう。 「あたし、マンゴの名前には黄色いペンキが似合うと思うなぁー」 「オレンジとかどうよ」 「えー、マンゴでオレンジじゃできすぎよぅ。絶対黄色の方がイイってば!」 先日真新しい黄緑色のペンキを盗まれたばかりの哀れな画材屋の軒先から、今度は黄色のペンキが消え失せたのは、それから程なくしてのこと。誰の仕業かは明らかなものの、結局そこの店主もまたいつものように泣き寝入りをする羽目になったとか。 (絵:竹湖 文:マツモトツナシ)
竹湖
2007/08/25 (Sat) 01:08
初めましてでどかんとお邪魔いたします。 竹湖と申します。ぺしみ祭に心躍らせ、参加したくても初めましての身。一人で投稿はチキンハートだったので、文章書きを捕まえてまいりました。 草むらの似合う猫もいますが、ランペは断然街の猫だと思っています。雌猫たちとも、雄猫たちとも自由に遊んでいる彼女の姿は大好きです。今回はガチンコ勝負しそうな格好いい磯谷ランペのイメージで描きました。 日々増えるランペにワクワクして日参しています。これからもひっそり応援させていただきます。
りうきち
2007/08/26 (Sun) 01:03
イラストとFFの合作投稿ありがとうございます〜。 可愛いですねランペ可愛いですね。こりゃあ磯谷さんですね! 綿の雪ごっこ…萌えました! マンゴに容赦ない攻撃をくわえるところがステキすぎです。 たしかにランペは草むらとか自然の中より街中の雑踏が似合うような気がします。やっぱり盗むものがなくっちゃね。なーんもないところだと、すぐに退屈しちゃいそうですねえ。 「名前の形」っていいですね! 猫にとっちゃあ文字も図形ですよねー。 ひっそり応援だなんて言わず、がっつり参加してやってください!
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